ゲリー・ファレル テイスティング・セミナー

ソノマのルシアン・リヴァー・ヴァレーの名門ワイナリーの1つである「ゲリー・ファレル」からジェネラルマネージャーのナンシー・ベイリー女史が来日しました。輸入元主催のセミナーに参加しました。

GF

シャルドネ、ピノ・ノワールの銘醸地として名高いご存じソノマのルシアン・リヴァー・ヴァレー。この地を代表する醸造家の1人で、伝説の醸造家と言われるのがゲリー(ギャリー)・ファレル氏です。

1978年老舗ワイナリーの「デイヴィス・バイナム」でワイン造りをスタートさせたゲリー・ファレル氏はルアン・リヴァー・ヴァレーのパイオニア的存在である「ロキオリ」のワインメーカーとして名声を高めました。デイヴィス・バイナムやロキオリでのワイン造りで出会った素晴らしい畑から葡萄を供給してもらえるようになった彼は1982年に自らの手で初めてピノ・ノワールを造りました。それはなんとロキオリ・ヴィンヤードとアレン・ヴィンヤードのブレンドでした(1985年リリース)。そして自身のブランド「ゲリー・ファレル」を設立。

2004年彼はあまりにも大きくなり過ぎたゲリー・ファレルというブランドを売却しました。そして2006年に副社長兼ワインメーカーを務めたゲリー・ファレルから退きました。しかし2007年彼は最初のワイン造りに回帰するために少量の高品質ワイン造りを目的とした「アリシアン」を立ち上げました。そして残念ですがゲリー・ファレル氏は2012年に醸造界から引退し、アリシアンをウッディ・ハンブレヒト(祖父がリッジの創業メンバー)に売却しました。

栄誉殿堂入り Hall of Fame 生産者としてソノマNo.1とも言える伝説の醸造家ゲリー・ファレル氏。彼が立ち上げたゲリー・ファレルは、ワイン&スピリッツ誌で全米ワイナリー・オブ・ザ・イヤーを10度以上受賞した名門ワイナリーです。ゲリー・ファレルの現在のオーナーは、キスラーやルトゥムなどのトップ・ワイナリーと、デュレルやギャップス・クラウンなどの一流畑を所有するビル・プライスです(スリー・スティックスというワイナリーでご紹介しました・・・)。そして2012年に醸造長に抜擢されたのがテレサ・ヘレディア。UCデイヴィス卒業後、ナパのジョセフ・フェルプスが所有するソノマのフリーストーンでワイン造りに携わり、サンフランシスコ・クロニクル紙で“最も注目すべき醸造家”に選ばれました。ブルゴーニュのドメーヌ・ド・モンティ―ユにて伝統的なワイン造りを学んだ彼女の造り出すワインは、元祖ゲリー・ファレルのリッチなスタイルとはまた違った、ソノマの冷涼なエリアで育まれる葡萄が持つエレガントさを最大限に表現したワインです。ギャリー・ファレル氏も彼女の造るワインを愛しており、時々ワイナリーを訪ねては自宅用に購入してゆくとのことです。

ゲリー・ファレル3

本日のセミナーのテーマは「ルシアン・リヴァー・ヴァレー」。ナンシー・ベイリー女史からルシアン・リヴァー・ヴァレーのテロワール及び現在のゲリー・ファレルのワイン造りについてお話がありました。ルシアン・リヴァー・ヴァレーはソノマの中でもかなり広い面積を占める AVA です。太古の昔この地は海の底であり、海洋性土壌、火山性土壌、石灰岩土壌などが混じり合い、土壌はルシアン・リヴァー・ヴァレーの各地域によってさまざまです。また、ルシアン・リヴァー・ヴァレーのテロワールの一番の特徴が霧の存在です。太平洋からの冷たい霧は夕方から広がりこの地は一晩中霧に覆われます。冷涼さを必要とするピノ・ノワールには最適な環境です。昼夜の寒暖差が大きいこともこの地の特徴です。今回はルシアン・リヴァー・ヴァレーを5つの地域に分けて、各地域の単一畑のワインからその地域のテロワールの特徴を探るといテイスティングをします。ゲリー・ファレルは自社畑を持ちません。ゲリー・ファレル氏の時代からの続く栽培者との関係は現在も残っており、合計で43もの畑の葡萄を使用しています。シャルドネの AVA ものでは16の畑、ピノ・ノワールの AVA ものでは22の畑のワインをブレンドしています。

 ゲリー・ファレル2

テイスティングはこちらです・・・(価格は輸入元税抜上代価格です・・・)

River Selection Chardonnay Russian River Valley 2016
★ルシアン・リヴァー・セレクション シャルドネ ルシアン・リヴァー・ヴァレー 2016 ¥6,300
Olivet Lane Vineyard Chardonnay Russian River Valley 2015

★オリヴェット・レーン・ヴィンヤード シャルドネ ルシアン・リヴァー・ヴァレー 2015 ¥7,800
McDonald Mountain Vineyard Pinot Noir Russian River Valley 2016
★マクドナルド・マウンテン・ヴィンヤード ピノ・ノワール ルシアン・リヴァー・ヴァレー 2016 参考品
Hallberg Vineyard Pinot Noir Russian River Valley 2016
★ホールバーグ・ヴィンヤード ピノ・ノワール ルシアン・リヴァー・ヴァレー 2016 参考品
Martaella Vineyard Pinot Noir Russian River Valley 2016
★マルタエラ・ヴィンヤード ピノ・ノワール ルシアン・リヴァー・ヴァレー 2016 参考品
Rochioli-Allen Vineyards Pinot Noir Russian River Valley 2016
★ロキオリ=アレン ヴィンヤード ピノ・ノワール ルシアン・リヴァー・ヴァレー 2016 参考品
Russian River Selection Pinot Noir Russian River Valley 2016
★ルシアン・リヴァー・セレクション ピノ・ノワール ルシアン・リヴァー・ヴァレー 2016 ¥7,200

まずはシャルドネです。葡萄は低い糖度で早めに収穫されます。そうすることで天然の酸を残します。醸造は基本樽発酵そして樽熟成です。フレンチオーク(約35%新樽)でシュール・リー熟成させます。以前より澱とのコンタクトを長くしました。また樽のトーストは以前はミディアムでしたが、現在はライトになっています。ルシアン・リヴァー・セレクション・シャルドネは8つの畑の葡萄をブレンド。別々に収穫し、別々に醸造します。柑橘系果実の風味。樽の風味は前面に出ることなく、綺麗な果実味を感じさせるバランスの取れた味わいです。オリヴェット・レーン・シャルドネは1975年に植樹された銘醸畑オリヴェット・レーン・ヴィンヤードから。ルシアン・リヴァー・ヴァレー中央部東のサンタ・ローザ・プレーン Santa Rosa Plain に位置し、温暖地と冷涼地の中間的な気候に影響されます。粘土質土壌。フレンチオークで発酵、フレンチオークで熟成。一部500Lの大樽パンチョンを使用(強い樽の風味が付かない)。複雑味のあるふくよかな果実味。十分なミネラル感。少しの潮のニュアンス。グレートなシャルドネです。

そしてピノ・ノワールです。シャルドネと同じくカリフォルニアとしてはやはり低めの糖度で収穫します。醸造は基本ステンレスタンクで発酵そして樽熟成です。一部全房発酵。フレンチオーク(約35%新樽)で熟成させます。コールド・マセラシオンやイクステンディッド・マセラシオンで果皮との接触時間を長くし、葡萄本来の味わいを引き出します。南(冷涼・黒色)から北(温暖・赤色)へとテイスティングです。マクドナルド・マウンテン・ピノ・ノワールはルシアン・リヴァー・ヴァレー南部のセバストポール・ヒルズ Sebastopol Hills に位置します。ルシアン・リヴァー・ヴァレーのテロワールの最大の特徴である霧の影響を大きく受ける地域です。凝縮した果実味としっかりとした酸。赤黒系果実のフレーバーが華やかに漂います。冷涼地ですがしっかりとした味わいです。ホールバーグ・ピノ・ノワールはルシアン・リヴァー・ヴァレー中央部南のラグナ・リッジ Laguna Ridge に位置します。ルシアン・リヴァー・ヴァレーの中では比較的昼夜の寒暖差が少ない地域です。ゆえに柔らかい膨らみのある果実味が特徴ですが、冷涼地の特徴も持ち合わせます。ザクロやクランベリーの黒系果実の風味。ポマール・クローンの特徴がよく現れています。マルタエラ・ピノ・ノワールはルシアン・リヴァー・ヴァレー中央部東のサンタ・ローザ・プレーン Sanat Rosa Plain に位置します。この地域は霧は比較的早くはれます。粘土質土壌。ブルゴーニュのように密樹された畑で、凝縮感のある果実味と深みのあるタンニンが特徴。ルシアン・リヴァー・ヴァレーらしい赤黒系の果実味は綺麗に整った旨味のある果実味です。そしてゲリー・ファレルのフラッグシップワインとも言えるロキオリ・アレン・ピノ・ノワールです。ゲリー・ファレルのワイナリーのすぐ北で、ルシアン・リヴァー・ヴァレー北部のミドル・ランチ Middle Ranch に位置します。ルシアン・リヴァー・ヴァレーの中では比較的霧が少ない地域です。砂土壌。ロキオリとロキオリが管理するアレンのブレンド。上記3つのピノ・ノワールとはやはりひとつ飛びぬけた印象です。ベルベットのような艶やかで丸みのあるアタック。気品のある優しい果実味ですが、しっかりとした骨格を持ちます。綺麗な酸も特徴の1つ。ルシアン・リヴァー・セレクション・ピノ・ノワールは8つの畑の葡萄をブレンド(3~6番のピノ・ノワールもブレンドされています)。赤いフルーツと黒いフルーツが見事に混ざり合い絶妙なバランス感を持ちます。重くはありませんが適度なボリュームもあり、華やかさを持ちながらも旨味のある飲みごたえのある味わいです。ワイン&スピリッツ誌でベスト100ワインに選ばれました。

 ゲリー・ファレル1

かつて一世風靡したゲリー・ファレルのワインとはスタイルを変えて復活した新星ゲリー・ファレルのワインは本当にバランスの取れたエレガントな味わいのワインです。単一畑のワイン(今後日本に入荷予定)は素晴らしいのですが、十分な時間をかけてブラインドで試飲してブレンドを決める AVA もののワイン(ルシアン・リヴァー・セレクション)は本当に素晴らしい味わいです。まさにブレンドの妙です。

【これを飲まずしてルシアン・リヴァー・ヴァレーを語ることなかれ・・・】(8月23日)

【ソノマ伝説の醸造家ゲリー・ファレルが築き上げたワイナリーです・・・】(2018年12月5日)

 

 

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