テッド・レモン氏来日(リトライ)

ブルゴーニュファンをも唸らす、高品質でかつ非常に繊細でエレガントなピノ・ノワールとシャルドネを造り出している「リトライ」。先月来日したIPOBの象徴的存在のワイン生産者でもあります。オーナー兼ワインメーカーのテッド・レモン氏が来日しました。本日輸入元主催のセミナーに参加してきました。

フランス・ディジョン大学で醸造学の学位を取得したテッド・レモン氏は、ジョルジュ・ルーミエ、ブリュノ・クレール、パラン、ド・ヴィレーヌ、デュジャックなどブルゴーニュのトップ生産者の元で経験を積み、ギィ・ルーロではコート・ドール初のアメリカ人醸造長に抜擢されました。アメリカに帰国後は、一昔前のカリフォルニアを知る方には垂涎のシャルドネを造り出していたあのシャトー・ウォルトナーの創業に醸造責任者として招かれました。またコンサルタントとしてフランシスカンやクロ・ぺガスなどの著名ワイナリーにも参加し、オレゴン(アーチェリー・サミット)やニュージーランドでもワイン造りに携わりました。

1993年ピノ・ノワールとシャルドネを手掛ける小さなワイナリー「リトライ」を設立。ワイナリーを立ち上げるにあたっては、北はワシントン州、オレゴン州、南はサンタ・バーバラ・カウンティまでカリフォルニアの海岸に沿って旅をし、自分の目指す品質とスタイルを実現できる場所を探し求めました。最終的にはノース・コーストの冷涼な海岸線(リトライ)にワイナリーを構えました。優れたピノ・ノワールやシャルドネは、葡萄が完熟できる限界の冷涼な海岸線沿いで育つと信じたからです。

濃厚なピノ・ノワールが大勢を占めた時代、当初リトライのワインはあまり高い評価を受けることはありませんでしたが、食事と共に楽しむエレガントなファインワインを探し求めていたカリフォルニアのソムリエ達に見いだされ、次第に名声を高めていきました。現在ではソノマのテロワールで自然なワイン造りを実践し(主にバイオダイナミックス)、クラシックなスタイルを貫く先駆者として多くの造り手から尊敬を集めています。近年注目を集める、バランスを重視し繊細なワイン造りを目指す造り手のグループ「IPOB (In Pursuit of Balance)」を代表するメンバーでもあります。

 リトライ

テイスティングはこちらです・・・(価格は輸入元税抜定価です・・・)

 Littorai Charles Heintz Vineyard Chardoonay Sonoma Coast
★リトライ チャールズ・ハインツ シャルドネ ソノマ・コースト 2013 ¥12,000
 Littorai B.A.Thierlot Vineyard Chardoonay Sonoma Coast
★リトライ ティエリオット シャルドネ ソノマ・コースト 2013 ¥12,000
 Littorai Pinot Noir Sonoma Coast
★リトライ ピノ・ノワール ソノマ・コースト 2013 ¥7,300
 Littorai Savoy Vineyard Pinot Noir Anderson Valley
★リトライ サヴォイ ピノ・ノワール アンダーソン・ヴァレー 2012 ¥10,100
 Littorai Hirsch Vineyard Pinot Noir Sonoma Coast
★リトライ ハーシュ ピノ・ノワール ソノマ・コースト 2012 ¥10,800

実は本日のセミナーではリトライについてのお話はいっさいなし。約2時間初めから最後までバイオダイナミックス(ビオデナミ)のお話でした。「The Universal Principles of Biodynamics 」バイオダイナミックスの一般的な教義は1925年のルドルフ・シュタイナーの農業モデルのアウトラインなしには実践できない。「普遍的、宇宙的な教義」「普遍的、宇宙的な実践」「普遍的、宇宙的な影響」という非常に難しいお話でした。人間と農業の係りから始まり、いろいろな時代を経て(古代から産業革命を経て近年へ)農業そして植物や動物の変化を見つめ、今後どのようにしてバイオダイナミックスを応用していくのかということです。「さて、我々に課された使命とは、植物の観察方法を学ぶことであり、その際には有機体としての植物全体の中で、各々の種の占める位置が明らかになるように留意せねばならない(ルドルフ・シュタイナー)」

リトライが使用する葡萄の約80%がバイオダイナミックスです(90%がオーガニック?)。チャールズ・ハインツは現在オーガニック栽培(認証なし)、ティエリオットは現在バイオダイナミックス。個性の違いはありますが、共に色合いが薄いレモンイエローで、華やかな果実味ですが決して重くなく、心地良い余韻が長く残ります。共にフレンチオークにて発酵、フレンチオーク(25%新樽)にて11ヶ月熟成後ステンレスタンクにて5ヶ月熟成。チャールズ・ハインツはALC13,5%、ティエリオットはALC13,1%。ソノマ・コースト・ピノ・ノワールはステンレスタンクにて発酵、フレンチオーク(25%新樽)にて11ヶ月熟成。ALC13,3%。綺麗なバイオレットの香り、シームレスで優しいアタックの果実味。サヴォイは現在オーガニック、ハーシュは現在バイオダイナミックス。共にステンレスタンクにて発酵、フレンチオーク(25%新樽)にて11ヶ月熟成。シャルドネ同様他の生産者が造るこれらの畑のワインよりもリトライのワインはしっかりとした果実味ですが華やかで決して重くないです。サヴォイはフルーツ味が前面に出た味わい。ハーシュは本家よりも少し黒っぽい風味の味わいでした。
サヴォイはALC13,3%、ハーシュはALC13,0%。

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テッド・レモン氏は畑に対して真摯に向き合っている方です。シュタイナーの理論を受け入れ、バイオダイナミックスを実践しています。実は悪い意味でストイックな方かなと思っていましたが、良い意味でストイックな方でした。「バイオダイナミックスを実践するにあたって人智学者である必要はない。しかしながらどこかしら人智学者的な刺激がないといけないだろう。」「畑から恩恵を受けて、その恩恵を畑に返す。」「長い目で見て、バイオダイナミックは良いと思う。」いろいろ考えさせられる難しいセミナーでした。正直バイオダイナミックに関してはまだまだ完全に理解できていません。私個人の結論は、やはりバイオダイナミックスは実際に自分でやってみないと理解できないだろうなということです(自分でやってもたぶん理解できないことは多々あると思いますが・・・)。

前日の輸入元の試飲会にテッドさんが参加しました。いくつかリトライについて質問した後いつもの行動へ(笑)。サインくださいって言ったら不思議がっていましたが、ジャージ見て苦笑。ジャイアンツのファンですかと訊ねたら、オフコースと苦笑。でも息子さんがジャイアンツの大ファンとのことです(笑)。ジャージには友人もたくさんいたので、笑顔でサインしてくださいました(喜)。

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今日はセミナーが始まる前に廊下ですれ違いました。笑顔で「ハイ、コンニチハ」って言ってくださいました。ワイン造りはやはり(笑)ストイックかもしれませんが、人柄はストイックでなくシャイで素敵な方でした。

 

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